モーリス・パンゲ『自死の日本史』メモ

十歳で敗戦を迎えた彼らは国粋主義的なしかし力と栄光ある父親の背中を見て今まで育ってきたのだけれど、敗戦を迎え実際に家に帰ってきたのは敗者で、その時代の転換自体には耐えきれたものの、自分たちが国粋主義的、力と栄光ある死んでいった兄もしくは父親の年齢に差し掛かった時になって挫折(「交換価値の支配する砂漠のようなこの世界」)を経験したとき、初めて自分が後を追える理想の存在はない――理想は敗れた――と知る。いや、あるんだけどそれは、理想は(敗戦という屈辱を食わされなかった理想は)悲劇的英雄、死んだ人間たちだけだということを悟ってしまう、というはなし。そして自分もその”理想”を追ってしまう。死んだ人間だけが最後まで美しかった。