艦船擬人化

  • 傾艦短歌(艦船擬人化短歌)

    その戦場、血の湧く英雄などおらず軽侮の眼差し海上護衛
    沈めたり沈められたり一枚の下へと続く海上護衛
    石油があること運ぶこととは別問題!そう叫んでは海上護衛
    「シーレーン」馴染みなかった今もないとりあえず守る海上護衛
    艦の熱狂浴びて船らも戦える気がした、主戦場は海上護衛
    蒼波に龍の鱗の様に落つ吸音タイルは国防の楯
    海星らの求愛言葉を受け入れてキスをされれば僕らは共犯
    陸上で片手を使い飯を食う非難するのは海上の民
    ソナー越し聴こえるか聴くわだつみの声は聴こえず在るは沈黙
    人魚姫、己をそう呼ぶ時もあり無害を装い隠すは魚雷
    絢爛の紙テエプの舞う祝福に果てなき旅路を願うは虚し
    船舶は国土の延長 亡国の道征く祖国のさだめも背負い
    国辱ぞ客船とはいえ担うは責務、去り往く独逸のお客は何処
    輸送船残るは我のみ 縋るのは栄光の記憶 藁掴む想いで
    鈍色の海で想うはあの時の絢爛たる色舞う紙テエプの
    「花のよう」船体を見て人は言う、白塗り白粉の貨客船
    紫陽花の色彩深め泥沼に 沼を掻き分け海上輸送
    桜散るあの子が散ったわ彼もまた、桜喩えて菊を供う
    火の海の色は薔薇色 薔薇園の花を煮詰めた痛みがそこに
    金盞花金色散りて乱れゆく浮きて沈めば静寂ばかり
    横須賀の艦艇見ゆる駅に立つ 隣通るは制服姿
    制服の姿がなじみ軍港は 店にも貼らる「自衛隊割」
    人びとは平和を祈るその昔 艦を仰ぎし護国の鬼と
    艦艇は征くことが常ただしくば 時代は平和、静寂の海
    除籍艦 垢の際立つ喫水に失くしたかと問う命の重み
    軍港のクルーズ相手に両手振る これも一種の広報であり
    カレー食う戦友は此方に目もくれずカレーはいつでも食えるだろうに
    真剣な戦友が囁く「海自カレー制するものが海自を制す」
    人気にて並んだ挙句に通される質素な裏部屋ハイカラ食堂
    戦友の癖こそこそ集めは溜めていくカレー付属の自衛艦旗
    カレーはね何度食べても美味しいねそういい帰艦す金曜の夕
    艦船の量産たくさん子だくさんふねも人らも産めよ殖やせよ
    「戦標船、美しくないわ彼女らは」優秀船らが矜持で詰り
    艦の簡略化は護衛への道 海防艦は丙から丁へ
    贅沢なデザインだと謂う曲線は美は財の無駄贅沢は敵
    幸福は物があること、千の富幾万の富、帝国の道
    軍縮に踊されては同胞を失くしヤケクソ芸者と踊る
    世の中の全てを恨む時すらも静かな声で彼は語りき
    同胞は平和のための殉教者自沈の誉れの荊冠被り
    海泥む華盛頓にてせめぎ合う対七割を生命掛けて
    未完成中止解体自沈のさだめ艦が失せれば平和は来ます!
    軍艦よ一枚下へ続けども前のみ見据え果てまで征けよ
    人殺し、艦を罵る船達も帝都と南洋結びをり
    船舶は国土の延長 船もまた帝国主義の子運ぶは務め
    「私達自由に海を泳いでた」自由は選ばれたものの特権
    「南下するんだってさあ」魚はいるのかそんな処に
    「そうだとも、我は海の子、いつだって海は優しい」空、寒々として
    この国の海往き思う「俺はまだ日本で死ねるか、ここは祖国か」
    敵機発見敵空母一隻見ユワレ敵ト交戦中の打電を最後に消息を絶つ
    一万の血潮荒波呑まれたが今も捨石、無名の小船
    「電探を集めて早し潜水艦」艦の軽口、船らの軽侮
    頼りない艦の護衛を頼りにす 護衛は苦手、戦を望み
    「護衛戦?護衛とは何、艦艇は戦う務めがある」といい
    灰色の誇りはあるかお前には、思わず尋ぬが艦知らんぷり
    稼働率、稼働率だよ輸送には 船団細切れ護衛少なし
    石油があること運ぶこととは別問題!そう叫んでは海上護衛
    「シーレーン」馴染みなかった今もないとりあえず守る海上護衛
    この海を渡り往く時願うのは魚雷の不発、当たるは覚悟
    私達心中しているみたいね、と船言う言葉告白みたい
    私はさエスコートしてあげられない敵潜悪漢無力諸共
    沈めたり沈められたり一枚の下へと続く海上護衛
    「電探が少し悪いのかしらね」と船の微妙な気遣い辛い
    「私達の海は交わらない。その方がいい、我らは違う」
    なんとなくご飯食べたい生きている実感湧けばなんでもいいよ
    守るのはいつでも苦手 敵潜は船を屑とすそれを見るだけ
    穴二つ 艦を呪いし船たちも護衛に走った艦も諸共
    その戦場、血の湧く英雄などおらず軽侮の眼差し海上護衛
    沈没地、赤バツ付けて付けつづけ真っ赤な南洋ブーケンビリア
    撃沈された愛娘らを呼ぶ声を聞く地獄の火の海に身を焼きながら
    復員兵海に飛び降り大脱走ひとのなき病院船の顛狂室
    航空機らを果てに送った航空母艦はひとり孤独と戦っている
    我が記す戦闘詳報示すのは既に戻れぬ黄金時代
    真珠湾開幕前のざわめきを調律音が低く掻切り
    調律音如くが低く鳴り響くエンジンの音、九九艦爆
    積年の恨みぞと言う彼ら振る帽が靡いて緞帳揺らし
    「桜木の下には死体が埋まってる」下を無視する一枚上で
    針の山殺意尖らせ発射するヘッジホッグで艦を殺戮
    死海に浮かぶふねになりたいこんな容易く死にたくない
    「今こそが船生一度の晴れ舞台」常そう思う、華やかな生
    我が綴るは出日本記、賠償艦祖国と仰ぐかつての敵地
    艦霊の艦内神社を仰ぎ見るその眼示すは神の不在
    花如く散ると誓いて散る時跳ねる桜と呼ぶには赤すぎる色
    特設艦、艦以上に艦たるべし艦も船も等しく翼賛すべし
    鉄鯨を慕い愛して住処とす此処が死に場所鉄の棺桶
    戦えない艦はただの鉄屑だと謂う貴方の首筋が好き
    共に逝く勇気無ければ愛も無く独り死ねよと詰る眦
    うつくしき理念で人を殺せども灰を湛える麗しき艦
    船底の様に濁りし眼して麗しき船錆びる赤色
    永遠の八月が来て私らは生きているぞと実感が湧き
    艦長は勇壮な戦死を語れども巡検の後の暗澹たる甲板整列
    そもそもが亡国である定めなり応召船団我が海失くし
    船舶は国土の延長 兵役を船も負わねば非国民なり
    戦場で遥か向こうの空見れば夜明けの黎明旭日の色
    船舶は国土の延長 亡国の定め諸共船を蝕み
    最果ての海を睨んで見送るは航空母艦の愛しき荒鷲
    地獄沙汰殴り殴られ制裁を受けて波間の航空母艦
    空仰ぎ「敵機直上急降下」叫んで待つは数秒後の死
    麗しき船ね私は麗しき船惨憺苦海の輸送任務
    護送船団の引くウェーキすら憎らしく命託して肩を寄り添う
    それぞれの地獄がありて我ら皆等しく逝けば狂風の中
    「それじゃあ征くよ」と貴方笑えば寂しき艦上全通甲板
    戦争に国家も人もふねたちも一元化すれば愛しきボレロ
    夢のなかで私は貨客船でした五色のテープが彩る我が身
    芸術を愛することは戦争に似てると思う特設巡洋艦
    人姿得た身が鈍く沈みゆく「鐵の城」名だけが強く
    讃美歌を歌いながらも生きること強く願うは軍艦たる故
    人の死をレンズ通して見送れば、灼熱の海(わたし、の、雷撃)
    「嗚呼あのひとも一人の人間だった」人間、と艦を呼ぶことおかしく思い
    軍艦が一隻沈んでいったので人間みたいに花で弔う
    碧々と夜空明ければ黎明の光まばゆい両目に染みる
    戦場で硝煙吸えば思い出す金鵄の味を、火気は厳禁
    艦隊の征く果て淡き蜃気楼冬に始まり夏に終わるか
    果てのなき太平洋の向こうにはふねたちだけの楽園あるらし
    幸福を語り続ける不幸艦「もしも私が人間だとして、」
    敗北も勝利も何も俺たちを変えることなどできるはずなく
    名前なし番号あればそれでよし海防艦も戦標船も
    「そちらでも元気でやれよ」と言われれば帰る場所など既にもう無く
    「期待しているわ、あなたは〝軍艦である〟ということ。そのことだけを」
    思い出はうつくしくあれ愛情も侮蔑も何もそこにあるなら 
    戦場で共に戦い諸共に沈むと誓えばまるで睦言
    いにしへの海底電線繋ぐのは軍艦達が殺した小声
    美しき現代日本様式の美しき様母の薔薇園
    夜駆ける海軍さんのサーカスが狙うは対岸米合衆国
    浅海のように涼しい眼して東から日は昇ると信じ
    大方の艦は道具を自負しをり惜しいと思う我が心あり
    船は海を往くことが幸せ、私たちそう考えても海なお深く
    愚かなることと知れども我往けり我は染まれり海なお深く
    「ヒ船団」名乗り想うは美しきシアトル航路、海なお深く
    船底の様に濁りし眼して「綺麗な海ね」(海、なお深く)
    波強く、押して引けば底なしの、海底深く、海なお深く
    うつくしき吾が妹の吐く言葉呪詛となりては我が心刺し
    誉ある大和の名を唯頂きて我は祖国と共に沈めり
    轟々と鳴り響く音荒鷲が狂飆を征けば勝利が其処に
    孤独こそ僕が求めていたもので僕に貴方は必要がない
    「いつか貨客船に戻るのよ」と嘯く彼女は敗戦に泣く
    されど愛されど憎しみ深くしてあのふね想う艦の情動
    船舶は国土の延長 政治にも軍事にもまた無縁に居れぬ
    野蛮なる祝祭として華開く艦と船とのオーケストラが
    波間にて揺蕩う身をよく潔く受け入れ艀はただ静止する
    「またいつか貨客船に戻るんだ」ビンタを喰わらせ呟けば虚仮
    それぞれの過去を捨てれば我ら皆等しく戦に使わる道具
    人間が生きると書いて「人生」と呼ぶと弁えふねの我をゆく
    同じ名を持ちて我よりうつくしき戦歴を持つ初代の栄光
    人間の行けない場所に行くがゆえに幻想を抱かれる鉄の鯨
    特設の巡洋艦の哀愁と嫉妬の発露、通商破壊
    我も過去、船だったこと忘れまじ(船のままねあなたの最期は)
    「またいつか貨客船に戻るんだ」呟き制裁、僚艦に加う
    愛情も恋情もまたすべからく知ることもなく海を分け征く
    先代を語るときに孕ませる敬意と忸怩を矜持で隠す
    我よりも悲しみ深き僚艦を測距し損ね無言に終わる
    特設巡洋艦獲物を目指し邁進するたび船生を離る
    波上の水兵リーベ僕の船兵士は愛しき船上に乗る
    くれなゐにくれなゐかさね氷川丸純白の肌染まりゆく我
    我を見よこの砲携え進み征く勇ましき様鐵の城
    地図上の仮想敵国ピンで留め遥か微かに轟くスーザ
    覗き込む静かな海に滲み出る黄金時代のナルシシズムが
    「秘すれば花よ貨客船は」船底の濁る空気も身分差別も
    そもそもが植民地たり我が船は伏目で頷き航跡を往く
    往くことを征くと言えるが花のうち重油の無き浜白く眩く
    愛することは支配すること使役するふねを思へば愛おしき吾子
    愛國の文字鮮やかに映える船特設巡洋艦蛮勇な姿
    浮き沈みしつつ無様に足掻きたりカルネアデスの船板の船
    船舶は国土の延長 美しく装えばまたお国の誉れ
    一引きの航跡のために我はあり戦火も息も波を揺らして
    二引描く旗を見よ我婀娜らしき笑みを浮かべて名を名乗るとき
    三度引く汽笛を鳴らして後進は今の時世にできるはずなく
    四は忌言葉、私たち縁起を担ぎ感情の儘に流され民族の船
    五度は引く亡き僚船の声々を無視して尚も船団は往く
    人間のように笑いて人ならぬことを自分で憐れむときに 
    強くあることは犯されぬこと我が「領土」固持し犯すは彼らの領域
    感傷も情熱もなく潔く艀のように静止する我
    得ることのなき栄光を胸に秘めただ粛々と波を切るとき
    選ばれし者と思う屠られるよりも屠るを幸福として
    愚直であることは素晴らしきこと逡巡も悔いも全てを亡きものとして
    うつくしき我を見よ我この姿誇りに思い艦の世をゆく
    一輪の花を野端に見つけゆく海でも同じ世は変わりなく
    忘れたい忘れたくない逡巡が飽和に至る淡き現在
    「聖書には書かれていたわ『信ずことやめたものから沈んでいく』と」
    船舶は国土の延長 うつくしき貨物を運べば共犯者なり
    シアトルへ航路を往けば美しき異国のゆりかご海色浅く
    戦標船「平時を夢見る、うつくしい物を運ぶの」戦禍ではなく
    「嫁ぐとは凱旋なき出征」海軍に行けと言われりゃ三歩引き
    軍艦のさだめを逃れるために乗る逃避の船の果てなき旅路 
    「ふねを我が墓場とするは死ぬ者の特権だろう、」(まるで、心中)
    戦争は世の常人の常なりとふねらも同じ人間の愛し子
    我もまた沈みゆくのだ、群青を身に浴びながら滅び逝くのだ、
    くれないの花を咲かせてふねたちは神話になりて人に語られ
    黒白の姿はかつて紅の線に染まりしうつくしき生
    人間の遺影のように飾られしあまたの船らのかつての航跡
    「ああ……そして、みんな沈んでいったのよ。みんな……綺麗な海になったの、」
    人間の苦悩の何も関せずの遺影の船は思い出となり
    氷川丸語りて曰く「死にきれず、私はここに飾り損なれ…」
    水底のふねはひとしく魚たちの命を抱えて無言の栄光
    犯罪者、放火犯と呼ばれぬが戦時の良い事、火が舞う港
    戦艦は理念を語れども重油なき身の係留の海
    その色は我らが属する海の色pearlgrayもashgrayも
    船舶は国土の延長 国土とも全て燃えれば生く意味ありや
    人間を使役者として愛したり、敵国人と憎んでみたり
    船舶は国土の延長 帝国の国土の延長でもある我ら
    「秘すれば花よ貨客船は」おしろいの下の錆びれた板は歪んで
    船舶は国土の延長 舶来の品はあまたの労働者の血
    鐵の城は武力そのものよ うつくしくあれ残忍であれ
    今一度この時こそがうつくしき生と思えど切る波高く
    三十年目の進水日よ波の冷たさに余命を感じ
    同名の代艦想えば愛おしくまた妬ましく我不在の海に
    船舶は国土の延長 赤紙が人間に届けば船にも届き
    我々に「君死にたまふこと勿れ」そう言う人間がいるはずもなく
    親は刃を握らせて「全速前進、向かうは敵の艦隊あまた」
    美しく人を殺して死ねよとて沈むことこそ使命なれとて
    ばんざいばんざいたからかなこえにまぎれるわれの情動
    菊が咲く艦首を南に向け征けばサンフランシスコ航路は遠く
    我の名は特設巡洋艦「愛国丸」屠られるより屠るを幸福として
    滲み出る悪意を笑みで押し殺し唇を噛めば鉄の味
    己が為帽深々と被りをり長い髪は地位ある証
    轟沈す軍艦に寄すいけにえの如く乗員生存者なし
    美しき名をはにかみ見せる乙女らのごとく船らはたおやかにある
    「地獄では波も枯れ果て航海も往く海々もなくなるらしい」
    往きて海、海と海、海、海の果て 黒々とした鉄の城あり
    船舶は国土の延長 人間の上下を決めるが生業なりき
    弧をえがく艦首はゆるく波を割る波濤を立てるは忍者にあらず
    紅白が交互にまじわり彩るはうつくしき生、秋空高く
    できるなら潜水艦を風船で祝う係の人になりたい
    白、黄色、朱色、藤色、桃色の風船が飛ぶ(祝われている)
    極彩の今このときが艦生でもっとも華麗な装いなりし
    これからは満艦飾もうつくしき装いもなしよ黒色の艦
    艦生でなによりもただうつくしき日である(ぼくらにとってはとりわけ)
    「秘すれば花よ貨客船は」時には軍需品すら抱えて
    矜持のために矜持を捨てること 軍縮の艦自沈する艦
    船舶は国土の延長 船隊は御国のために灰を彩り
    吾が父はそれは素敵なひとでしたこの身を華美に装ってくれた
    前夜にて聞かせることは船のこと船であること使役さること
    我の名は鯨あるいは深海の使者また黒い忍者「おやしお」
    父達の薔薇園にある大日本様式の椅子(我の座す椅子)
    天鵞絨の緞帳は青、それだけが愉快であった、平穏な日々は
    橙の灯は淡き絶望の色、我が老いた証その色
    うつくしく生きうつくしく死ねよとて先代我に名を引渡し
    船舶は国土の延長 舶来の品はあまたの奴隷たちの血
    我はここ貴方はそこにあればいい主義はいよいよ硝煙を帯び
    心中と呼べば甘き結末だ言えば陳腐になると黙して
    回想の過去だけがただ鮮やかで目を開け見据える戦時の塗装
    砕氷艦 孤独に生きよ凍る地が解けることなど知らないままに
    悲しさは、未練は、愛は船などに必要ですか。どうか教えて。
    戦争のまにまに浮かぶ。平穏は戦争後に来る、絶対に来る。
    花びらを見あげたことを憶えてます、散ることを無視しながら、わたしは。
    美しいテープでしたねえ、今生の一番の幸せだったときです。
    さようなら、素敵な船生でしたよ、と、いって娘は工廠に往く
    砲弾は雨と霰と降り燃やし戦争は一つの結末である
    羊羹は甘美なる味 給糧は戦争のための戦争である
    乱れるる碧き波間をとくと見よお前を生かし殺しをもする
    荒ぶれる波に揺られて縺れれば優雅な輪舞と笑う君あり
    その波濤押しては引いて底なしの我が力であり障壁でもあり
    一浪を乗り越え征けば二浪の吾が艦生なり我が定めなり
    除籍艦 垢の際立つ喫水に失くしたかと問う命の重み
    棺桶のやうに深くに沈むもの艦は死なねば朽ちるといふもの
    赤々と波は寄せ引きひとりでは寂しい波間を航跡はかく
    羅針儀は北へ 私は進みゆくこの戦場を征き進みゆく
    極北は此処、この場こそ果て なおも征く場所あると信ず軍艦
    イニシャルはN 父の名を戴きて新田丸往く浅き蒼蹴り
    動物と我らの数だけ沈みゆく(命は重い)ノアの箱舟
    暴風は神の御示し道先は長く遠く寒く瞬く
    女性性語るとき見る護衛戦敵潜なんぞ挟まる余地なく
    優秀船にも戦標船にもうつくしい名を与えたい子に与えたい
    等しく丸シップ、名を与えられ私たち違うのはそう耐久性だけ
    社史語る並びは喪失した順番そこに大小優劣はなし
    不自由の権化のごとく人間の身は重く沈みて海に浮かばず
    私はあらゆる意味でやはり軍艦でした。遺書に書いた。わからなくていい
    マリアナの海戦だって上出来の戦歴である改造艦よ
    命名は祝福我が名は私だけのものだった今あなたに託すわ
    薄幸の娘に施す餞の化粧は死に化粧にも似て
    未完成船というかく甘美なる響きわたしは生きるのが好き
    生きるとは波に浮くことただ海を往くということ燦爛たる青
    水兵のリーベぼくらの愛おしき船きみはただ静寂たたえて
    一人では軽くて二人なら沈む死ぬなら波間に飲まれていきたい
    雷撃の絶頂、わたしは加えられるより加えたい奪ってやりたい
    離別、そう、シルクの手袋着けていた そんな海もあったのだった
    名前、そう貴船はこれから船である ただの鉄ではなくよすがを持つ
    生くべきは海でありつつ死地である吾を柔く抱く血肉の器
    展翅に孕む残虐な愛情と美学 愛機は死地がお似合い
    離別たれかつ強くあれ特設の艦艇もどきを穿つ思い出
    白皙の船は孤独を抱えつつ血糊と垢は濡れればおなじ
    はらわたは鐵の味腹黒はどう海浮きても悔恨の今
    目障りな顔は南瓜と思いつつ古さと場数は海ではおなじ
    二引く線それを戴くことはなし(今は今なり)もしもは苦し
    風船も船のうちならたとえ鉄成れど吾は船、永遠の船
    海だった(船台離れ浮かびゆく我を愛しく抱いたものは)
    戦闘詳報汚泥の流れ赤血潮寄せては引く波濡れる我が身は
    被る赤 あるいはワインあるいは血、生まれることは罪を負うこと
    群青も深まれば黒(夜に往く海に無数の敵潜がいる)
    先代の艦のお触れを頂いて海には美しく浮くこと誓う
    (まぼろしの就航航路はすさまじき死臭を帯びる)米潜がゆく
    「秘すれば花よ貨客船は」白粉で人間を騙すが生業なりき
    「秘すれば花よ貨客船は」「運ぶこと、交流こそが平和への道」
    喫水線、変更の命(運ぶのは女のふりした兵どもよ)
    「京都」というスイートルームがあったっけ……褥のシルクの色すら忘れ
    地獄にてまた会うさだめ 艦長のお示しを信じ海を掻きゆく
    幻影の潜望鏡を見つけたり、見つけ損ねて失望したり

  • 潜水艦

    水上の仲間にも潜水艦の仲間にもきょうだいにすらも名前をあまり名乗ってはならない、うっかり自己紹介する癖がついちゃうからね。名前を知られないことを誇らねばならない。艦長の私室をうらやましく思わないこと。沈むのと聞かれたときは潜るのと訂正すること。悠々とベッドに寝ることになれるような潜水艦になってはならない。魚雷と一緒に寝ることに早めになれること。畳の上で死ぬことに憧れてはならない。陸に上がった河童になってはならない。泣いてはならない、海の中では無意味なのだから。行先もその期限も言えない、帰るべき場所、家族のいる人間たちに憧れてはならない。いつまでいなくなってしまうの、そう誰にも聞かれないことに感傷をおぼえてはならない。いつまでいなくならなければならないの、そう誰にも言えないことに悲しみを抱いてはならない。人間に恋してはならない。それは破滅への道である。そして愛したとしても自分の救いのために彼らに刃を向けてはならない。破滅の道を行けばさいごお前の心臓は破れ、海の上に泡となって浮かぶであろう。

  • 2024年8月16日のスペース

    『おおきく振りかぶって』と李良枝作品はなんか似ている身体性が似ている気がする

    →おお振りは17巻まで読んだ→コンプレックス感がひどく深くて良い→それは「ハウルの動く城」にもあるが、おお振りはむしろ暴力的なものを抱えている

    →短編集『家族のそれから』の、同性愛者と異性愛者の男子高校生の交流を描いた短編「ゆくところ」が荒削りだけどすごい

    →(※しばらく沈黙…)

    →おお振りは20年前の作品→現代設定なのにガラケーを使っている→現在の連載もガラケーなんだろうか?私はこれを「おお振りガラケー問題」と呼んでいる→この暴力性は何だろう?精神的に引き吊るような痛みがある→一巻で「腕を折るぞ」と言われているが、そういう身体的なものではなくて、こうの史代のような性的のものを感じる、おお振りとこうの史代と李良枝は似ている

    →李良枝は在日コリアンの作家で私は「かずきめ」が好き→母娘が在日コリアンで、日本人の家族(父、兄弟、妹)と再婚する話で、一番暴力性がある……これがおお振りに似ている→李良枝の重要ワード「身体性」が、高校野球の身体性に似ているのかも?→在日コリアンだからという作品ではなくて世界性を持った文学になっている、という解説を読んだことがある、私もそう思う→姉が恋人に言う台詞がある

    →「いっちゃん、また関東大震災のような大きな地震が起こったら、朝鮮人は虐殺されるかしら。一円五十銭、十円五十銭と言わされて竹槍で突つかれるかしら。でも今度はそんなこと起こらないと思うの、あの頃とは世の中の事情が違っているもの。それにほとんどが日本人と全く同じように発音できるもの。ね、いっちゃん、それでも殺されることになったら、私を恋人だってしっかり抱きしめて、私と、私と一緒にいてくれる?いえ、今度は絶対に虐殺なんてされません」

    →すごい台詞。身体性と暴力とジェンダーがある。これには続きがある

    →「でもそれでは困る、私を殺してくれなくちゃあ。私は逃げ惑うの、その後ろを狂った日本人が竹槍や日本刀を持って追いかけてくるわ、私は逃げきれなくて、背中をぐさっと刺されて、胸も刺されて血だらけになってのたうち廻るの。いっちゃん、あれは痛いのね、とっても――この間いっちゃんが研いだ包丁を掴んでみた。そしたら身体がびりびりとしびれて興奮してきて、まるでセックスをしている時のような気持ちになったわ。私、自分が何故お料理が嫌いなのか解ったような気がした。恐いのよ、あのびりびりした感じがたまらなかったのよ。それでね、その包丁で胸のところと手首を切りつけてみたの。痛かった。それに血が、本当にわっと出てくるんだもの。ぐさりとやってみたかったけれど、もっと血が出るのかと思うと恐くなって――今度は金槌で脚を叩いてみたわ、そしたらやっぱり痛かった。ねえ、いっちゃん、私は虐殺されるかしら、ねえ、どうなるの、もしも殺されなかったら、私は日本人なわけ?でもどうしよう、あれは痛いものね、血がいっぱい出るんだものね」

    →ジェンダーと身体性、民族が一緒くたになっているすごい台詞→身体性、「ぐさっとさされて」…

    →というのがおお振りにもある気がした?→ピッチャーの榛名元希は怪我をしていて大荒れしている、キャッチャーの阿部にとにかく球をぶつけている、男子高生/中学生時代→ひどく生々しい感じがある→「腕を折るぞ」が生々しい、主人公が弱気でブルブルしていることの理解度・解像度が高い、生々しい、絵が細かいのかな

    おお振りはカタストロフ(破滅的状態)が似合う作品、人間性・人間関係がごちゃごちゃになって映える作品、パロディが合いそうな作品→作者は下ネタを言いすぎて女子高生に引かれた、と書いているがそれが反映されているような気がする、こうの史代も「男と女はわがりあえない」と言っている、漫画「古い女」もある→両者はやはりどこかでジェンダーというものを通過している、まあおお振りは男子高生ばかりだけど……下ネタをいう男子高生とか

    →阿部が怪我をするシーンが有るが、これは敵相手がわざとけがをさせた話?いきなり話がブラックだった、ひどく生々しさがあった→高3は野球で負けちゃった後、テレビの野球試合が見れない、とかこの機微はすごくよくわかる→人間の闇の描き方が上手い→おお振り二次創作は身体性と暴力という話に持って行けばいいのかな……「かずきめ」みたいなおお振り二次創作小説……

    歴史性と身体性とジェンダーがごっちゃになって「あれは痛いものね、血がいっぱい出るんだものね」と全てに刺さっている→まあこれをおお振りで出しても仕方ないのか……

    →「ゆくところ」は濃厚な暴力性がある→登場人物の足が不自由で「お前の劣等感好きだよ」「障害者ってどんな感じ?」「おまえって障害者?」とか言われる、この地続きにおお振りがある

    →「著者、昔何かあった?」がこうの史代にもひぐちアサにも野田サトルにもある

    →「アル中が何だかわかんのか、CTかけたら頭がスカスカだったんだぞ、”敵が来たー”とか叫ばれてみ、家ん中スゲーすさみようだぞ、一年かけて矯正してもって半年、一口でも飲めばすぐ戻んだぞ、アル中の子供もそうなりやすいって施設で言われてさ、友の会に誘われちゃったよ、オレまで影響受けちゃってんのあのクソ野郎」父親がアル中、母が「シンケイショー」という話をしてくる

    →…二次創作をしたいからどう解題しようかなと思いつつ→花井の田島へのコンプレックスとか、高3はもう後がないとか、三橋がとても小心者で……→これはトラウマの話

    →私は他の野球漫画を読んだ事がない→『のだめカンタービレ』が好き、理由はバトル漫画じゃないから→音楽漫画にはバトル漫画が多すぎる→バトル漫画は萎える、伊藤計劃も似たようなことを言っていたけど、登場人物が興奮するほどこちらは萎えてしまう→音楽漫画としてののだめ、野球漫画としてのおお振り→野球を知らないので、野球以外の要素を楽しんでいるはず→登場人物がトラウマや闇を抱えている、でもけっして暗くない

    →こうの史代は「距離感」が上手い→女だから、広島県民だから感情的になる、というものがない、感情があるが滲みださない→漫画「古い女」は主張を感じる→ところですずさんには主義や主張はあった?義姉さんにも似たようなことを言われているけれど

    →『この世界の片隅に』の主題ってなんだ?となる→あとがきにあるように、戦争漫画・平和漫画というより、戦時下の生がだらだら続いている漫画→「うちはこんなに納得できん!」で初めて銃後の妻、愛国者であることがわかる→すずさんが『この世界の片隅に』が主張したかったことってなんだ?

    →朝鮮の旗が出てきたのはすずさんの生活上というより、著者が描きたかったこと/描かねばならなかったものなのかもと思っている→映画の台詞改変、「米」の話あれはスムーズで良いと思う

    →私の漫画「大脱走」は脱走した話→占領期時代だったのであえてそうした→1971年の『日本郵船戦時船史』の時は逃げないで欲しい→三菱重工さんとカラオケして欲しい、重工さんに浅間丸の話を聞いたら「ぼくは今作ってる兵器の話しかしませんよ」とか言われる

    →重工の長崎史料館は良い、ふねを愛していたんだな、となる→郵船さんにとっては橿原丸は隼鷹となる、重工さんにとってはどちらも製品の「ふね」→郵船さんが「私にとっては船は貨客船だったクヨクヨ」となるとまた脱走になってしまうかも→海軍に取られたというより送り出したというより主体性がほしい、「大脱走」は1948年だったのであえて脱走にしたけど

    →すずさんの「暴力」発言は早すぎる、あそこで脱走すべきだったのではないか→結局その「暴力」は戦後数十年かけて語ったり語らなかったりするもの(いわゆる歴史認識)→旗を見て暴力となるのなら、玉音放送が「うちは納得できん!」わけがない→『戦時船史』を造るときにどんな時代だったか、を郵船さんに「渺渺録」で回想して欲しい→そもそも私の船の話を聞きに行く、というのが主体性の無さになるので、ほんとうはそんなことすべてわかっている、わるい確信犯の話、である、しそうしたい

    →二次創作をしたいけど、やはり擬人化を描くのが好き、歴史が好き→一次創作は指数にする寄せて描くものが無いので絵が歪む、阿部隆也はたれ目に描かねば…みたいなものがない

    →思念は、思ったことは作品にして、読者の皆に食わせるしかない→1971年に出来る戦争の回顧、という主題は作品にしないと他者にはちゃんと通じないだろう→やはり御社が「ツケを払って」くれる話にしたい(失礼な感想)

    →ゲ謎はいい映画、「国が滅ぶぞ」「ツケは払わなきゃな」はすごい、2000年代のアニメだったら『ハーモニー』の最後みたいに滅んでた→世界が滅ぶことを美しいと思わない感覚が最近の作品には出てきた

    →『戦時船史』もすごいけど同『資料』の方がすごい、デジコレで読める→船で編む、ことも特殊な業界だと思う、乗組員もいたはず、乗組員の本も勿論あるけれども…→重工さんにとっては艦艇、貨客船、軍縮で自沈、商船改造空母も愛しいふね、郵船さんにとっては貨物船や貨客船が愛しい船

    →日本郵便…というか逓信省の組織史に浅間丸が掲載してある、物流としては逓信省にもかかわりがある、そのような世紀を描いていきたい→説教くさいのは描きたくないが時代を自省したものじゃないと…昔ってサイコー!だと危うい→高島屋さんがこの国の威信を美術を持って設計していると良い、緞帳をつくる、貨客船が美しかったことの意味、を描いていきたい

    →李良枝はどちらにも属せなかった…というよりそこに属せない自分と周りの齟齬が痛い、周りとの差がギリギリと痛い、がある→それがおお振りにある気がした、んだけど…→実は15巻あたりとか辛くてよめなかった→負け試合の野球の「あ~~~……」感がつらい、それも登場人物が人間関係のことを考えながら負けているのばかりなので

    →『外地巡礼』にも李良枝の話がある→私は「言語が生命を担っている」立場(一円五十銭の世界)に置かれたことがない

    →『外地巡礼』に一文がある…「母語と母国語の間で暴力的に引き裂かれるものの物語として読むだけでは足りない」…「日本語を母語と母国語として生きているものは、由煕の言語の苦悶と無縁なのだろうか」…(「由煕」は在日コリアンで韓国留学をして韓国に失望して日本に帰ってくる女の子の話)

    →母語と母国語にもなじめない、暴力性に引き裂かれるもの、の苦しみは、特設艦船(軍用艦に転用される商船)にもあるんじゃないか→貨客船として生まれながら横書きの航海日誌ではなく縦書きの戦闘詳報でしか語れなかった船→航空母艦冲鷹=貨客船新田丸は新しい船なので航空母艦になったけど小さい船、輸送船の護衛任務や航空機を運んだりした、でかい戦闘機を発艦・着艦したりしなかった(華の戦闘には加わらなかった)→そこで引き裂かれる思い→でも船は海を往ければ幸せなのではないか?→にせものの軍艦としての名誉、かなしさを掘り下げられればいいのではないか

    →美しい時代があったはずなのに戦争があって…→でも美しい時代を生きる為に生まれたのは優秀船舶建造助成施設があったから、という時代でもあった→という視点で「渺渺録」を描く、企業は事情をわかっていた、わるい確信犯→優秀船舶建造助成施設であるぜんちな丸や新田丸を作った、船の設計でエレベーターの配置などを航空母艦に転用しやすい船として造った、でも小さい船だったので、改造しても赤城や加賀のような大型空母にはなれなかった→企業は御国奉公を迫られ助成施設に参加したりした面もあるけれど→海軍に取られた…もあるし、送り出したのもある

    →あ、これは全部擬人化の話ですよ!?

    →郵船さんが1971年『戦時船史』で回顧してほしい→共に「下っていく」話が書きたい、海で言うなら「沈んであげたい」→「一緒に沈んであげるべきだったよなあ……なあ、浅間丸」という語り掛けが欲しい→映画「風立ちぬ」の原っぱを下る話は、煉獄から地獄へ降りる話なんですかね?→浅間丸と一緒に沈んであげるべきだった、という郵船さん→もちろん夢オチとかで言う、大企業なので沈まないので…→「渺渺録」の郵船さん、主体性くれ~!→海軍さんは貨客船の加害者ではない

    →郵船さんは浅間丸が好き、図録の後ろも浅間丸なので→ツケ払わなくてもいいけど、ツケあるんだなという気持ちで生きて行ってほしい→船の話を聞いて回るけど、聞かなくても私が一番分かっていたという話→夢の中でもいいから「一緒に沈んであげたい」

    →戦没船をどこに設置するかの話→海軍に取られたのか、優秀船舶建造助成施設で造ったとみるのか→主体性とツケ払が欲しい、「大脱走」では脱走したので

    →1948年の「大脱走」の主題は「今とこれからの話がしたい」。1971年「渺渺録」の『戦没船史』では”時には昔の話を”、ですよね

    →船で運んだというのはどういうことか?→『阿姑とからゆきさん シンガポールの買売春社会』(阿姑は中国人・からゆきさんは日本人)→本には日本の海運会社の名前が載っている→日本海軍はシンガポールでからゆきさんと会っていた→からゆきさんは運ばれていった、という客体だけで捉えるのではなく、行ったしお国奉公で日本にお金を送金していた、また同朋の海軍の接待を嬉しさを持って接していた

    →日本の近代化にあたって女性と石炭の輸出が重要だった→運んだこと運ばれていたこと、そこでなにをしていたのかということ

    →やっぱり擬人化関係あるか?となる→けど擬人化の均した感じ、観念の話が好き→あと擬人化100年1代の視点が好き、人間が100年4代で…→何が正解かわからいけど、あの時代にあったことを脱臭して無臭にして書きたくない→時代が好き…というと無条件肯定になる…どちらかというと執着がある→時代・歴史が好き、と言っても本を読んでいるだけなので実際は知らないので、『この世界の片隅に』から研究書を読むしかない

    →『HHhH』おすすめ、そういう悩みが延々と書かれている、歴史創作や歴史を扱う人には勧めたい。ナチスの小説を書こうかな…どうしようかな…みたいなことが書かれている。→「彼は名前を呼んだら返事をした実在人物なんだよな」「ナチスの一次資料がナチオタのせいでクソ高くなってるけど買わんでいいかな」とか→小説本編も挿入されている、歴史創作の悩みと歴史創作本編が書かれている→フローベルの話がある「時代考証はある単語、あるいは観念を調べていくうちに支離滅裂な妄想に耽り、切りのない夢想にはまり込んでしまう、がこの問題は真実性の問題とは切り離せない」と書いているみたい

    →ちなみに私はこの種の悩みはupnoteに書いている→「大脱走」は2分割ノートになっていて、片方は37000文字ある(すべてが「悩み」ではない)

    →「今までは「ふねが沈んだ、だから悲しい」とか「戦争に負けたのでつらい」とかそういう、なんというかストレートな話しか描けなかった。そしてそれらは往々にして機微や繊細さに欠けていた。人の感情は、人生はそんな単純なものではないのだ、人に彩られた企業や船もそんな単純な道筋を進むわけではないのだ、と思いつつ模索している」

    終戦を以てしても戦争が終わらなかった物語を描きたいのだ

    「硝子に書かれた看板文字がスキ」

    「美しい貨客船を描くべきか」などなど

    →一次創作が描けない→オリキャラ愛は強くはない、私が映画監督でキャラは俳優のような感じ、他人である

    →あの時代を描くという気持ちはある→(私もだけど)時代をまったく知らない人いる、その人たちにどう伝えるか→「占領期の日本海運」と言われてわかるかどうか?「氷川丸が南方に復員作業に着く」とか→「華やかな客船文化を憶えている」で伝わるか?という話

    →「大脱走」の台詞に「華やかな客船文化を憶えている。同時に各地に棄民同様に打ち捨てられた三等客のことを憶えている。軍隊を憎みながら嬉々として加担したことを憶えている。私たちが社員と船を戦地へ見送ったこと、そこへ船で運んだこと、諸共沈んだこと、沈まなくてもそこで軍属や特設艦艇になったことを憶えている、そして外国で戦火を広げたことを憶えている!戦争は私たちの招いた結末だったのだろうか、これは私たちへの罰なのだろうか」があるが、これを共有できるのか、郵船さんの自省を、時代を読者と共有できるか

    →そう考えた時に貨客船を、ベル・エポックを、「美しいものを失ってしまった」という普遍性に焦点を当てて描くべきなのかも→美しいものへの離別、その主題を1945年などで補強する→「大脱走」は不親切、わかっていたけれど

    →そもそも戦時下の船員さんは有名ではない、「兵士たち」に含まれない戦場の人→わかりやすさは重要、占領期、船員、戦没船→私はわかるけど相手はわからない「戦没船っているじゃん?」「え……軍…艦?」となる

    →企業は本土にあるので、見送った側だし戦没を見ていない→なので一緒に沈んであげたい、も感傷で観念になるかも

    →「郵船ビルが接収される!!」に読者はうん?になるかも、それを美しいものを失ってしまった、で持って行く

    →あるぜんちな丸の小説「海にありて思うもの」を書いている→3章構成であるぜんちな丸(海鷹)、新田丸(冲鷹)、春日丸(大鷹)、シャルンホルスト(神鷹)の話→シャルンホルストは戦争でドイツに帰れなくなった→『艤装の美』に「異郷での客死」と一言がある→貨客船のシャルンホルストの軍艦の海、日本の海という二重の「異郷での客死」→こういうのも越境文学さがある

    →2章目のあるぜんちな丸と冲鷹のはなしが「かずきめ」を念頭に書いた

    →冲鷹はきっと病んでいる→新田丸、小型でたいした航空母艦にはなれなくて、どこか輸送船が羨ましい、でも私は軍艦としてしか生きれない→「未だ商船の名残を留めたる特設運送船に対し、すでに商船でない商船改造空母が軍艦であることで優越を誇る海軍という場の、露骨なまでの軍隊ざま、すさまじき地獄ぶり」→「ここではそうあることでしか我々は生きれない」→隠し切れない屈辱と羨望とをその声に孕ませ航空母艦隼鷹の名を呼ぶ冲鷹

    →あるぜんちな丸の姉妹船ぶら志”る丸がぶらじる丸のまま戦没しているのも運命を感じる→あるぜんちな丸は海鷹になる、ぶらじる丸は戦没してしまったからぶらじる丸→貨客船のまま沈んだこと→ぶらじる丸はぶらじる丸、新田丸は冲鷹して生きてしまった、ことの悲しみ

    →『戦時輸送船ビジュアルガイド2』にある一文「昭和初期、可能な限り欧米のしきたりや技術を取り込んで国威の発露たらんとした「浅間丸」型は、多くの要人や著名人をのせて太平洋を往来し、時代の推移を陰で支え、時には自ら表に立った。日の丸船隊の花形とうたわれながら、それでも現実は順風満帆とはいかなかった。この3隻こそ、日米戦の無謀さを最も熟知していた船だったはずだ。外交とは何か、平和とは如何にして得られるべきか。自らの時代に、忌まわしい流れを別の方向へと変えることはできなかったのか。日本という場所に生き得たものは、果たしてどうあるべきなのか……。暗い深淵で、彼らは今なお自問自答を繰り返しているかもしれない。ただ、空母という戦争の道具になりかわらず最後まで客船という本来の姿を通しおおせたことで、彼らは平和の尊厳を未来まで明快に体現する力を手に入れた。あなたには深淵の声が聞こえるだろうか」は読んで欲しい

    →浅間丸はサンフランシスコ航路船、古め、航空母艦の予定もあったけど流れた、輸送船として戦没する、空母にならなかったこと、空母になったら浅間丸じゃなくなる→浅間丸は美しかったものの象徴、私も日本郵船も→浅間丸の図録は妙に厚い笑→「大脱走」も浅間丸に捧げた

    →軍艦、艦艇、灰色も書きたい、今なら帝国の時代の軍艦、海軍らしい艦艇が描けるはず→貨客船の話ばかりだけど、やはり軍艦は好き、かっこいい→10年前と今だと擬人化の解釈って変わる気がする→多方面で見るべきものを一つで見るのが擬人化創作、可愛い女の子か凛々いい男の子か→まあキャラを描くことだけが擬人化創作ではないので…

    →『『細雪』とその時代』がある、『細雪』も美しかったものが滅ぶ話→『『細雪』と』に藤永田造船の話がある→大阪商船さんが「こいさん」と言ってほしい、船場言葉短歌が欲しい

    →おお振りのコンプレックスとトラウマが良い、これらは李良枝に似ている、これをまとめて二次創作が描きたい→社会人パロが似合う、『私の男』第一章が合う、駄目になっている関係性、誰か絶対にバウムクーヘンエンドを迎えているはず

    →艦船擬にはトラウマはない、特設艦船擬にはあるはず→海軍は加害者ではない、そう描く気もない、あれはシステムの問題だと思っている→青春鉄道の人間との関係性と時代の捉え方がめちゃくちゃわかる、上手い、青春鉄道もいつか二次創作したい

    →トラウマの話、何かを失ってしまった話としての特設艦船、おおふり、『マーダーボット・ダイアリー』がある、トラウマの世紀


    ※×「にほんゆうせん」/◎「にっぽんゆうせん」:いつも「にほん」で変換しているのでつい発音もにほんになってしまう……。
    ※阿部君がけがをしたのはたまたまだけど、怪我をさせた選手は昔ラフプレーを続けていた、という設定みたいでした。すみません。